生物の個体群・群衆動態の安定性や種間相互作用の理解は生態学における重要課題の1つであるが、これらをフィールドの観測データから実証的に明らかにしようとした研究はほとんど存在しない。それは種間相互作用や安定性評価が、野外の個体群動態から直接観察することが困難なためである。
本研究では、Empirical Dynamic Modelingと呼ばれる高度な時系列データ解析手法を駆使して、京都府北部にある舞鶴湾に生息する15種の水生生物の「個体群の時系列データのみ」から群衆の安定性や種間相互作用を解明しようとした。解析の結果、本群衆の安定性が夏に高くなり、冬に低くなるということを明らかにした。これは夏に舞鶴湾に生息する生物の種多様性が増加し、種間相互作用が冬よりも弱くなる事からもたらされることを示唆した。
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ゴルジ体はほとんどの真核生物で見られる細胞小器官で、ここには小胞体から膜小胞という形で送られてきた膜脂質とタンパク質が運ばれてきます。そしてこの運ばれてきた膜脂質やタンパク質などを、各細胞小器官で機能するものや細胞外に放出するものなどの目的地ごとへの仕分けをゴルジ体は行なっています。つまり、ゴルジ体は膜交通システムのハブとして機能しています。 この様なゴルジ体ですが、その構成は主に脂質膜で、扁平な袋状の槽が積み重なった特徴的な形態をもちます。また哺乳類の細胞においては、細胞分裂時にゴルジ体は小胞の集団にまで分解されて形態的特徴をなくすという事が知られています。近年の分子生物学的技術の発展によりゴルジ体を構成する分子に関しては多くの事が分かってきましたが、ゴルジ体の形態形成メカニズムに関してはよく分かっていません。電子線トモグラフィーや連続切片法などの三次元電子顕微鏡観察により形態を知る事はできますが、形態形成ダイナミクスを観察する事はできません。 そこで立川らは、哺乳類細胞分裂時のゴルジ体再集合過程に着目し、ゴルジ体の形態形成ダイナミクスを説明する数理モデルを開発しました。また開発した数理モデルの解析を行う事で、ゴルジ体の形成には、小胞集合、膜変形、膜融合の3つのプロセスの時間スケールが適度な関係を持つ事を示唆しました。 数理生物学が細胞生物学の理解にも重要である事を示す、非常に先駆的で興味深い研究であると言えます。詳細は論文解説の方に掲載しておりますので、是非1度読んでみて頂ければと思います。 C型肝炎ウイルス(HCV)は、感染したら最終的に肝硬変や肝がんを引き起こしてしまう恐ろしいウイルスで、世界で1億7千万人ほどが感染していると推定されています。今までに、沢山の研究者たちの努力により非常に多くの抗ウイルス薬が開発されてきていて、特にHCVのウイルス複製を直接阻害する直接作用型抗ウイルス薬(DAA)達は、非常に治療効果の高い抗ウイルス薬であることが知られています。現在のHCV治療戦略はこれらの薬を2種類から3種類の複数飲むことが一般的となっていて、非常に高い治癒率を達成しています。これは非常に喜ばしいことなのですが、同時にどの薬の組み合わせを患者に飲ませるべきかという問題が生じてしまいます。 小泉らは、実験科学と数理科学の融合研究を展開することでこの問題に対処しようと考えました。彼らは、各々の薬に対する抗ウイルス効果を評価できるようなin vitroのウイルス感染実験系を新たに作りだし、またその様な実験から得られたデータを数理モデルにより解析することで、各々の薬の組み合わせに対する抗ウイルス効果を、定量的な視点で議論しました。 この様な定量的な評価系は、ある患者さんが使っている薬が、副作用が強かったり、特定のHCVの型に対して耐性を持っていたりして、代わりの薬を探す時に非常に有用であると考えられます。数理生物学的知見を医療現場に応用するという、非常に挑戦的で面白い内容となっています。詳細は論文紹介の方に載せておりますので、ぜひ1度読んでみて頂ければと思います。 |
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